SATRI RIAAイコライザ技術資料
1998.06
SATRI-ICを使ったRIAAイコライザは、電流入力の特長を生かし、MC専用とすることで、今まで聴くことのできなかった生々しい音をLPから引き出すことに成功しました。
ただ、その音の変化は、従来の電圧信号を増幅するのに対して、あまりにも大きい変化なので、RIAAカーブのイコライジングが正しく行われているかという疑問が湧いてきます。
そこで、同じSATRI-ICを使ってRIAAイコライザを使って、電圧モードと電流モードでRIAA特性の違いを測定してみます。
電圧モードの測定では、SATRI-IC RIAAイコライザの前にFETバッファ・アンプを置きその出力を電流に変換します。
図1
まず、電圧モードでの出力電圧を1図に示します。 電圧モードでは、電流モードに比べると出力電圧は少なくなっています。
これは、バッファの出力インピーダンスが大きいためで、もっと出力インピーダンスの低いバッファを使えば、大きい電流に変換することができるので、出力電圧を上げることができます。
また、サテンのM118の高域が下がっていますが、これは、針の摩耗によるものと考えられます。
図2
次に、RIAAカーブとの偏差を図2に示します。多くのカートリッジは±1dB以内に収まっていますが、大きく外れているものもあります。これは、経年変化のため、針の摩耗や、ダンパーの変化によるものと思われています。比較的、新しい物は偏差が小さく、その事を裏づけていると思います。
グレースのカートリッジは、初期のMCタイプと思われ、ダンパーが硬くなって5KHzでピークを出しています。図3に電流モードでの出力電圧を、図4にRIAA偏差を示します。
図3
図4
図1と図3を比べると出力電圧は、電流モードが大きくなっているのがわかります。
これを電圧モードのときの出力電圧と比べてみると、図5が得られます。
図5
これを見ますと、電圧モードに比べて電流モードのほうが出力が大きくなっているのですが、その大きくなる割合が、カートリッジによって違うことが分かります。
図6
その割合を表したのが図6です。図6を見ると、平均では倍率は2倍ほどですが、6機種では3倍以上になっています。
これは、これらのカートリッジが出力電圧に比べて出力電流が大きいことを示します。
こういうカートリッジは、電流モードで使うことによって変換効率のいい動作をすることになります。
つぎに、RIAA偏差を見てみます。図2と図4を見てみますと、ほとんど同じ傾向を示していることがわかります。
図7
この事は、電流モードと電圧モードではRIAAカーブの偏差は変わらないと考えられます。では、その実態を詳しく見てみます。
図7は電流モードの偏差の絶対値から、電圧モードの偏差値の絶対値を引いた物です。これを見ると、ほとんどのカートリッジの偏差の差は0.5dB以内に入っています。測定ではアナログ電圧計の指示の中間値を採りましたが、変動が激しいカートリッジも有ったので、平均値を採ってみます。
図8
これを見ますと、すべてのカートリッジが0.5dB以内に入っています。また、プラスの偏差よりもマイナスの偏差が多いことがわかります。これは、電圧モードよりも電流モードのほうがRIAA偏差は少ないことを示しています。以上のデータから、電流モードのRIAAイコライザは、電圧モードに比べてもRIAAカーブの偏差が大きくなることはないといえると思います。
RIAAイコライザにおけるDCサーボのかけ方
「SATRI
IC技術マニュアル」「SATRI
IC設計ガイドライン」において、RIAAイコライザにおけるオフセット打ち消しの方法の一つとして、DCサーボをかける回路の紹介をいたしました。その時紹介したDCサーボの回路は12dB/Octのオペアンプによるフィルターを使いましたが、実際に試作してみると、サーボループ内にRIAAネットワークがあり、そのままでは大きなピークを生じることが分かりました。そのピークにより、カートリッジの交換時などに大きなクリック恩が出てしまいます。回路を図9、周波数特性を図10に示します。
図9
図10
図10のようにピークができてしまい、過渡的な入力に振動してしまいます。これを避けるには、カットオフの周波数をずっと下げるといいのですが、それではあまりにも時定数が大きくなりすぎます。そこで、位相回転が大きい12dB/Octを止め、6dB/Octにしてみました。回路図を図11、周波数特性を図12に示します。
図11
図12
このような回路にすることで、ピークの発生を防ぎ、正確なRIAAカーブにすることができます。図11の回路では電池動作の場合のバッファアンプでの電力消費を少なくするため、FETによるバッファアンプにしました。
また、出力のDCオフセットを1mV以下にできますので、出力コンデンサも省くことができます。
ただし、入力コンデンサを省いたため、カートリッジのDC抵抗の違いによるオフセット打ち消し電流が安定する時間がかかりますので、カートリッジ交換時にはクリック音が出ますので注意が必要です。
戻る