製作例1 高木様のA級パワーアンプ
こんにちは、高木です。
やっと、メインアンプが完成しました。
これがA級アンプの特徴なのでしょうか、調整にしても音だしにしても、非常に安定感を
感じております。
立ち上がりは、12〜14秒位でOK,気になっていた温度は2時間くらい慣らしっぱ
なしの状態で、放熱器に手をやっと置いておける程度です。(室温27℃)
但し、パワー段の電圧が28.6Vありますので、アイドル電流は1.2Aに設定しました。
音は1時間の慣らしですが、最初から空間の大きさ、距離感、五月蝿くなくて、
且つ音通りが良いといった感じのものです。
VRを仮で付けてあったり、置き方を工夫していないせいもあり、出てもいいはずの
細かいところが聞こえてこないので、1週間程度の慣らしと調整は必要とおもいますが先が
楽しみです。
永井さん、すばらしい基板をありがとうございました。
追伸:別メールで写真を送らさせてもらいます。
パワーアンプの写真です。
DSC_0022:10Hz矩形波 VR 9時の時
DSC_0014: 〃 VR 最大
の時のもので、高域の矩形波もきれいに通っていました。
パワーアンプ仕様
キット基盤使用
Ver5.1 IC使用
Ver6.2 回路
回路は基本的に設計例の回路を使用
製作
・ケース 430*430*200h
・トランス POWER段 21V-0-21V 9A?
・ drive段 タンゴ CT-50
・ OPアンプ段 20-0-20V 0.2A
・レイアウト 電源部を中央に置いて、二階建て構造
下部に3900μコンを30ヶ配置してあります.
・基盤は放熱器に取り付けましたが、完成後のメンテ、調整を考え
電源線等をファストン端子で中継してあります.
・尚、調整時には別に300*200のアルミ板に基盤を取り付けブロワーによる
強制空冷で作業しましたが、大変便利な方法でした.
・ドライバー段のFETはバラ売りのまま使用しましたが、何とかなっています.
完成後
・数時間でケース内温度がかなり上がりましたので、ケース天板に50角12Vの薄型
ファンを2台取り付け6Vの電圧で作動させて騒音の軽減を図りましたが、
ケースに反響してあまり良くありません。別の方法を探るつもりです。
また、内部温度上昇の原因は半導体よりも電源トランスにあるようです.
・音は日に日に変化していっていますが、空間の広さ、奥行き、音像はシャープなのに
細くならず、音にキツサが無い、暖かささえ感じます.
これらは、最初から有った印象です.
・既存の自作satriアンプでは、オーケストラがイマイチだったのですが、
これは雰囲気を出してくれ、CDの種類が増えそうです。
・一つ戸惑っているのは、野鳥のCD
を掛けた時、前のアンプでは前方上方で囀って
いた鳥たちが、今度のアンプでは、鳥の数が増えたうえ、自分が木の上にいるような
感覚になったことです.今後の調整でどう変わるか興味を持っています.
・後でプリを作る予定で、VR/ATTを付けなかったのですが、、今のところプリの
必要性は??になってしまいそうです。
VR9時 |
VR最大 |
設計者より:10Hzの方形波も素直なので、バイアスサーボ、DCサーボも問題ないようですね。A級アンプは、私も是非作ってみたいと思っています。VRの線が長くなる場合は、ケーブルの容量に注意してください、ケーブルの容量が大きいと高域低下につながります。
高木さんのアンプの電圧増幅段のドリフト特性:
高木さんのアンプの電圧増幅段のドリフト特性を測定していただきました。
永井さん、こんにちは 高木です。
今週中、何かと忙しくデータ取りが出来ず遅くなってしまいましたが、下記のごとくです。
| 電源ONからの時間(分) | 5 | 10 | 15 | 20 | 25 | 30 | 35 | 40 | 45 | 50 | 55 | 60 | 65 |
| ドリフト電圧(mV) | 3.2 | -9.7 | 17.3 | 19.1 | 10 | 28.8 | 34.2 | 38.4 | 21.8 | 38 | 40.9 | 38.3 | 41.9 |
10Hz |
10KHz |
100KHz |
7.5Ω+0.1μ |
7.5Ω+2.4μ |
製作例2 設計者の試作
私も遅まきながらA級パワーアンプの試作に取り掛かりました。
これから作ってみようと思う方の参考になるように、なるべく沢山のデータを取ってみました。
今回は、入力段のバッファーと電圧増幅回路です。
まず回路図と試作基板の写真を示します。
回路図 |
試作基板 |
バッファー回路:
まず、バッファーですがこれは元回路の通りの2SK330と2SJ105のコンプリメンタリです。ソースに入れるVRは50オームでオフセットが取れました。FETの内部インピーダンスが130オームほどありますので、1V入力で1mA流すためにR4は820オームに変更しました。電源電圧をプラスマイナス15Vとしたときにドレイン電流は3.57mA流れます。入力1V、電圧電流変換抵抗R4を820オームとしたときの歪率は0.0272%です。コンプリメンタリJ−FETは電源電圧変動に対して動作がどうなるか試してみました。
| プラスマイナス電源電圧(V) | 出力電圧(rmsV) | 歪率(%) | ドレイン電流(mA) |
| 16 | 0.843 | 0.0272 | 3.57 |
| 15 | 0.843 | 0.0272 | 3.57 |
| 14 | 0.843 | 0.0279 | 3.57 |
| 13 | 0.843 | 0.0286 | 3.57 |
| 12 | 0.843 | 0.0299 | 3.57 |
| 11 | 0.843 | 0.0311 | 3.57 |
| 10 | 0.843 | 0.0333 | 3.57 |
これを見ると、動作点は全然動かないようです。歪が悪くなるのは直線性が悪化するためで、これは仕方が無いと思いますが、それでもその変化は少ないです。
バッファから発生するノイズは7.79マイクロボルトで、パワーアンプでは問題にならない程度です。
電圧増幅回路:
SATRI回路を含めた電圧増幅段の電源は定電圧電源を使って26Vにします。そのときの最大出力電圧は18Vrms位ありますので、ドライブ電圧としては十分だと思います。
この回路で問題になるのは、DCサーボを掛けるか掛けないかです。それに、SATRI−ICにV5.1を付けて効果があるかどうかも確かめておきたいですね。
まずはそれを調べてみる事にします。
測定条件は、入力820オームでシャント、RLは10Kオームです。
チャートのスピードは1cm/分、レンジはプラスマイナス50mVです。
SATRI−ICのみ |
SATRI−IC+V5.1 |
| 出力電圧(Vrms) | SATRI−ICのみの歪率(%) | V5.1つきの歪率(%) |
| 0.1 | 0.066 | 0.068 |
| 1 | 0.060 | 0.066 |
| 5 | 0.054 | 0.059 |
| 10 | 0.044 | 0.045 |
| 17 | 0.070 | 0.094 |
これを見ると、VRの位置で殆ど歪が変化しません、これはノイズや歪がVRの変化にしたがって変化し、S/N比がVRの位置で変化しないからです。V5.1を付けたほうが歪率がわずかに悪くなっていますが、測定誤差の範囲だと思います。
では、周波数を変えた場合の歪の変化を見てみます。測定回路はV5.1を付けた回路です。
| 周波数(Hz) | 20 | 50 | 100 | 500 | 1K | 10K | 20K | 50K | 100K |
| 歪率(%) | 0.068 | 0.067 | 0.067 | 0.067 | 0.067 | 0.067 | 0.068 | 0.088 | 0.130 |
| 出力電圧(Vrms) | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
これを見ますと50KHzまでは、殆ど歪率が変わりません。さすがに100KHzは悪化していますが、無帰還で1%以下ですから、良いほうだと思います。
ノイズはV5.1を付けても変化は無くAカーブで97マイクロボルトです。電源電流はSATRI−ICのみで40mA、V5.1を付けて50mAです。
最後に方形波特性を示します。測定周波数は1Hzから1MHzです。ファンクションジェネレターの出力を820オームで電流に変換してSATRI回路に入力しました。画面の上が入力波形、下が出力波形です。
1Hzから100KHzまでは殆ど入力と出力は同じですが、さすがに1MHzではなまってしまいます。出力を変化した場合の波形変化などの詳しい測定は出力段が出来上がってから測定してみる事にします。
次に入出力の遅れを測定してみます。これは100KHzの立ち上がりで測定してみました。
これを見ますと26.7nSと非常に遅れ時間が少ない事が分かります。この遅れの少なさもSATRI回路の特徴の一つです。
次はパワー段が出来上がったら、データを追加します。
DCサーボの追加:
ドリフト特性を見るとプラスマイナス10mVくらいに収まっていますが、ATTを使う事を考えればプラスマイナス1mV以下に押さえたいところです。しかし、V6.2のDCサーボと2段になれば、よほどうまく時定数を調整しないと低域にピークが出る恐れがあります。今までのDCサーボの回路としては、CR2段の12db/octのフィルターを何の疑いも無く使ってきました。12db/octフィルター2段になると特性が重なった所は24db/octとなり、カットオフ周波数付近の位相の回転が大きくピークが出やすい特性になります。
そこで、考えたのはDCサーボには、必ず12db/octのフィルターが必要かということです。つまり、6db/octではだめなのかと言う事です。6db/octなら位相の回転も少なくピークが出来にくいので、DCサーボを2段重ねたとしてもピークが出来にくくなるはずです。
早速試してみる事にしました。もう基板が出来上がっているのですからシミュレーションでやるよりも実際に作ってみる方が手っ取り早いです。サーボ無しのドリフト特性を見てみると大きなドリフトは30秒から1分周期です。振幅は20mVpp位ですから、これを1mV以下にするためには1/40くらいにすれば良い訳です。6db/octでドリフトの周波数を30秒0.033Hzに対して1Hzのカットオフの周波数のフィルターを掛けると約1/32になります。
DCサーボのカットオフ周波数1Hzで試してみる事にします。コンデンサを1マイクロFとすると、抵抗は160Kになります、手持ちの関係で180Kにしましたので、カットオフ周波数は0.83Hzになります。
回路図と特性データを下に示します。
回路図 |
ドリフト特性 |
OPアンプ出力 |
DCサーボ用のOPアンプはLF411を使い、C10は付けないで、R8はジャンパーでショートです。J6のジャンパーは忘れないようにしてください。それから、回路図でR6の抵抗値を書き込むのを忘れていますが、R6は1Kです。
ドリフト特性はレンジ変更の前は10mV/div、変更後は1mV/divです。結果は御覧の通り、目論見どおりにドリフトは目で見て分からないくらいになっています。オフセットは0.2mVに収まっていますが、これはOPアンプのオフセットだと思いますので、気になる方はユニバーサルパターンを使ってOPアンプのオフセット調整回路を付ければ良いと思います。DCサーボのOPアンプ出力は、DCサーボが無い場合のドリフト特性と逆方向に働いています。6db/octのサーボでも十分効果があるようです。そうすると、出力段のサーボも6dbで良いかもしれません。そうすると、サーボ2段でも12db/octですから、安定なサーボが掛けられそうです。
また、電源ONのときのショックノイズも200mV位に収まっていますし、時間も短いのでこの点でもDCサーボが有効です。
DCサーボの定数の見直し:
DCサーボをかけた状態で方形波特性や周波数特性を計ってみました。VR最大の状態での方形波特性を見てみると1KHzでもサグが少し見られます。VRを下げていくとゲインが少なくなってきますのでサグも減少していきます。VR最大のときの周波数特性は20Hz位までフラットで、それ以下は徐々にレベルが落ちていきます。VR最大で使う事は少ないと考えても、できれば、もう少し低域を延ばしたいところです。
しかし、低域を延ばすためにDCサーボのカットオフ周波数を下げていけば、ドリフトの周波数の帯域にかかるサーボ量が減少し、ドリフトが表面に現れてきます。カットオフ周波数を下げてサーボのフィルターを12db/octにすると、その分サーボ量が増えてドリフトの抑制効果は高くなりますが、出力段のDCサーボの影響が心配になります。この辺のさじ加減をどうするかと言うのは難しいのですが、とにかく、サーボのカットオフ周波数を変化させてみる事にします。チャートのスピードは1cm/分、レンジはプラスマイナス5mVです。
2.2M+1u |
620K+1u |
LF411オフセット調整 |
オフセット調整回路 |
まずは、180Kの10倍くらい2.2Mにして見ます。これだとドリフトが200マイクロVp−p位あります。ちょっと多いような気がしますし、電源投入時のノイズも大きいです。次は半分の620Kにして見ます。これだと電源投入時のノイズも3mV位で、ドリフトも100マイクロVp−p以下です。オフセットは-0.4mVありますが安定しています。ついでにOPアンプLF411のオフセット調整をして見ます。オフセット調整回路は簡単で、1と5番ピンに10KオームのVRを接続し、スライダーを-Vccに接続するだけです。基板のユニバーサルパターンを利用して配線します。オフセットの調整はVRで調整しますが、きちんと合わせる為には多回転のものを用いる必要があります。オフセット調整を行うと余裕でプラスマイナス100マイクロV以下に収まります。
次にDCサーボを掛けた後の方形波特性を見てみましょう。1KHzと10KHzはフルボリュームでの特性です。上記定数ではサグも無く綺麗な波形です。
1KHz |
10KHz |
では、100Hzではどうでしょうか。
100Hzではフルボリュームではサグが出ていますが、ボリュームを絞ってゲインを下げていくと御覧のようにサグが無くなっていきます。これは、ゲインを下げる事によって低域の帯域が広がっていく事を示します。
高域側でも同じような事が起こります。
100KHzでもゲインを下げていくと、御覧のように波形のなまりが少なくなっていきます。これは入力信号電流が一定の場合は、ゲインにより帯域が変化する事を示します。
SATRI回路のRLを下げてゲインを下げて行く事は、フィードバックを掛けたと同じような働きをしますが、信号をフィードバックするわけではないので、歪率は下がりません。
電圧増幅段は、一応、この定数を採用する事にして、出力段を製作してみることにします。
出力段の製作:
今回の出力段はMOS−FETドライブでバイポーラトランジスタの出力段です。この組み合わせは試した事が無いので、うまく行くかどうかちょっと心配です。
まず、回路図を示します。
回路図 |
出力段はMOS−FETドライブのバイポーラトランジスタ出力です。SATRI回路V6.2を搭載するためには、出力段の入力インピーダンスを大きくする必要があります。また、出力段の電源電圧がプラスマイナス24Vですから、出力を大きくするためにはバイアス電圧が小さく出力インピーダンスが小さいバイポーラトランジスタがロスが少ないので有利です。また、2SA1987/2SC5359の出力段はAMP-5520で採用して出力をショートしても壊れないと言う丈夫さを見せてくれましたので、安心して使えるトランジスタです。
V6.2のバイアスサーボとDCサーボは2.2Mと1uの時定数で1次のフィルターを構成してみました。この時定数は電圧増幅段と合わせて最終的に決めようと思います。まずは、1次フィルターのサーボ回路でちゃんと動作するかどうかを確かめてみました。
下図に出力ドリフト緑、バイアス電流赤、バイアス電圧青を示します。スケールは各色で示してあります。
これを見ると、電源投入2分くらいで定常状態に入るのが分かります。バイアス電流はGNDとエミッタ抵抗の電圧で計りましたので、ドリフトも含まれています。最初の1分間くらいは100mV程度の電圧が出ますので、コーンタイプは問題ないとしてもホーンのドライバを直接繋ぐ場合は2分位は遅れて出力を接続するような安全回路を入れた方が良いかもしれません。
ドリフトは0.1mV以下、オフセットも0.1mV程度に収まっています。バイアス電圧はバイアスサーボのOPアンプ出力を見ています。これを見ると、電源オンと共にバイアス電圧は直線的に上がり、温度上昇と共にバイアス電流が増えていくのをバイアス電圧を下げる方向に制御し、バイアス電流を一定に保っています。SATRIV6.2を搭載したアンプは、今までのアンプのようにトランジスタの温度を一定に制御するのではなく、バイアス電流が一定になるように制御しますから、周りの温度が変わってもバイアス電流は変化しません、その代わり、発熱量は一定になりますから放熱器の温度は外気温が上がれば放熱器の温度も上がります。今までの温度制御のアンプでは外気温に関係なくトランジスタの温度を一定にしようと働きますから、外気温が下がればバイアス電流が増え、外気温が上がればバイアス電流は減ります。従来の方式だと、外気温や電源電圧の変動によって動作点が動きますが、V6.2を搭載したアンプではそういう外乱によって動作点が変動する事はありません。
それでは、正弦波特性を測定してみます。最初は心配だった歪率特性を取ってみます。オシレターの出力が6Vまでなので、1Vと6Vを測定してみました。負荷は8オームです。
| 周波数(Hz) | 1V歪率(%) | 6V歪率(%) |
| 20 | 0.00671 | 0.0037 |
| 50 | 0.0064 | 0.0033 |
| 100 | 0.0066 | 0.0031 |
| 500 | 0.0066 | 0.0030 |
| 1K | 0.0066 | 0.0029 |
| 5K | 0.0066 | 0.0046 |
| 10K | 0.0068 | 0.0079 |
| 20K | 0.0071 | 0.0157 |
| 50K | 0.0217 | 0.049 |
| 100K | 0.0293 | 0.086 |
このように、出力段での歪は殆ど問題ないようです。
次に周波数特性を計ってみました。
| 周波数(Hz) | 20 | 50 | 100 | 500 | 1K | 5K | 10K | 20K | 50K | 100K |
| 1V入力時の出力(V) | 0.925 | 0.929 | 0.930 | 0.929 | 0.930 | 0.929 | 0.928 | 0.925 | 0.905 | 0.858 |
| 6V入力時の出力(V) | 5.54 | 5.57 | 5.57 | 5.57 | 5.57 | 5.57 | 5.56 | 5.54 | 5.41 | 5.09 |
1KHzでは1Vに対して-0.6db、6Vに対しては-0.64dbです。1V1KHzに対して20Hzは-0.046db、20KHzは-0.0648db、50KHzで-0.24db、100KHzで-0.7dbで十分な帯域を持っています。
次は方形波特性を測定してみます。正弦波特性は静的な特性ですが、方形波特性はステップ電圧を加えるので、動的な特性を見ることが出来ます。
ノイズ電圧は入力ショートAカーブで17マイクロVで、問題になら無いくらいです。
10Hzから100KHzの25Vp−pの方形波をファンクションジェネレターから加えてみます。上が入力、下が出力で、負荷抵抗は8オームです。ch2の電圧表示が1Vとなっていますが、これは検出ピンの接触不良で、実際は10Vです。10Hzでこれくらいのサグなら十分な帯域です。100Hzでは殆どサグは出ていません、電圧増幅段よりも時定数を大きくした性です。1KHzを見てみると立ち上がりに小さなピークがあります。入力にはありませんので、どうも高域にピークがあるようです。10KHzではっきりとそれが出てきて、100KHzでは明らかに寄生発振をしています。今まで、高域で問題が出たことはなったので、これはちょっと、ショックです。こういうように、アンプの不具合は測定器が無いと、なかなか見つけることが出来ません。自作派の方には、オシロスコープ、方形はと正弦波の出せる発振器は、是非、揃えていただきたいと思います。明日は、出力段の高域問題に取り組みます。
出力段の調整:
100KHz方形波の寄生発振の原因は、負荷抵抗から交流電圧計に接続していたケーブルが原因でした。ケーブルを外すと発振は止まります。しかし、容量が100pFにも満たないケーブルで発振するのですから、容量負荷に弱い事には変わりありません。従来行われてきた対策としては負荷に並列にコンデンサと抵抗を直列にしたものを接続して高域の帯域を下げてやる方法があります。この方法を試すと、1000pFと3Wの33オームを直列にしたものを接続すると一発で止まります。容量負荷に対しても問題なくなりますが、抵抗は相当発熱します。ということは、高周波の大電流がコンデンサを流れている事の証拠です。このコンデンサはクリティカルで、指でコンデンサをつまんでも音が変わるほどです。ですから、この方法を使うのは私の好みではありませんので、他の方法を考える事にします。
どういう原理で発振するかと言うと、方形波は基本周波数のほかに高い周波数成分を持っています。特に高速のファンクションジェネレターは立ち上がり時間が短く100KHzでも数10MHzの周波数成分を持っています。この高周波成分がトランジスタやプリントパターンの浮遊容量を通して正帰還がかかって発振すると考えられます。
これを防ぐには、そういう高周波成分を含む信号を与えないようにすれば良い訳です。簡単には出力段に直接信号を入力しないで、電圧増幅段を通して信号を入力すれば、電圧増幅段の帯域は出力段より狭いので、それを通せば100KHzの方形波を加えても発振する事はありません。ただ、それでは、出力段のみの安定性が確保できたわけではないので、本質的な解決ではありません。
もう一つの方法としては、出力段の帯域を狭めてしまう事が考えられます。出力段の帯域がどんなに広くても、電圧増幅段の帯域がそれに比べると狭いので、完成したアンプの帯域は電圧増幅段の帯域に支配されてしまいます。ですから、電圧増幅段よりも、ちょっと広い帯域を出力段に持たせるようにします。やり方としては、コンデンサを付加して帯域を狭める方法もありますが、その場合、コンデンサのキャラクタが音に影響する場合が多いので、コンデンサは使わないでドライバのMOS−FETのゲート抵抗を増やして帯域を狭める事にしました。最終的にはバイポーラトランジスタのベース抵抗は少しでも出力を稼ぐためにショートし、ドライバのMOS−FETのゲートに5.1Kオームを入れて安定動作をさせる事が出来ました。ですから、変更は次のようになります。
R21,24=10オーム >ショート、R22,23=100オーム >5.1K
次は、いよいよ総合特性を計ってみます。
総合特性:
まずは、アンプの安定性を見てみましょう。信号は初段のバッファを通して入力し、電圧増幅回路を経て出力段です。入力は1Vp−p、出力は20Vp−pになるようにゲインを調節しました。
パワーアンプは、容量負荷に安定な事が必要です。これが不安定だと正確な再生は望めません、変な癖があるアンプを測定してみると、大抵容量負荷に弱いです。ケーブルとの相性なども、容量負荷の安定性に関係してくるようです。特定の容量で発振する事があるので、幅広い容量でテストしてみる事が必要です。今回は0.001uFから2.2uFまでをテストしてみました。測定信号は10KHzの方形波で、負荷の8オームに並列に容量を入れた場合と、容量のみを負荷にした場合を測定してみました。リンキングは良いですが、発振してしまうとNGです。
御覧のように2.2uFを並列に8オームにしても、リンキングが発生するだけで発振する事はありません。次は、容量のみを負荷とした場合です。これは、アンプにとっては過酷な条件です。
8オームと並列に接続したものと比べても、わずかにリンキングの振幅が大きくなっているだけで、大変安定しています。これで、一安心です。
次は、周波数を変えた方形波を入力し、波形がどうなるか見てみます。
周波数は10Hzから100KHzです。さすがに10Hzはサグが目立ちますが、超低域でのピークなどは出ていないようです。100Hzではわずかにサグが出ています。10KHzは綺麗な波形で高周波でのピークなどは出ていないようです。100KHzでは出力段の帯域を狭めたため、なまっていますが、高域は10KHzの波形は綺麗に出れば良いと思います。
次は正弦波を使った静特性を見てみましょう。まず、入力に1Vの信号を入れてVRを最大にしてみます。
VR最大 |
1%歪率 |
VR最大では、上下がちょっとクリップするくらいです。これくらいのゲインであればちょうど良いと思います。ゲインを変えたい場合は、電圧増幅段のカレントミラーのエミッタ抵抗で設定します。
1%の歪率のときの波形を見てみます、このときの電圧がこのアンプの最大出力です。1%歪の時の出力電圧は8オーム負荷で16.25Vです。最大出力は8オームで33Wです。
ノイズ電圧はAカーブで重み付けしてVR最大で115マイクロV、最小で20マイクロVです。
周波数特性は次のようになります。
| 周波数(Hz) | 20 | 50 | 100 | 500 | 1K | 5K | 10K | 20K | 50K | 100K |
| 出力電圧1V | 0.998 | 1.002 | 1.003 | 1.002 | 1.003 | 1.003 | 1.003 | 1.002 | 0.992 | 0.948 |
| 出力電圧5V | 5.02 | 5.05 | 5.05 | 5.05 | 5.06 | 5.06 | 5.06 | 5.02 | 4.84 | 4.40 |
| 出力電圧10V | 9.85 | 9.96 | 9.98 | 9.99 | 10.01 | 10.01 | 9.98 | 9.84 | 9.10 | 7.77 |
| 出力電圧15V | 14.57 | 14.88 | 14.97 | 15.02 | 15.03 | 15.03 | 14.93 | 14.54 | 12.69 | 9.32 |
一番帯域の狭い15V出力で、20Hzは-0.26db、100KHzで-4.1dbです。上下の帯域はDCサーボの掛け方や高域補償でどうにでも設計できます。一応、今回はこの定数で組上げてみる事にします。
次に歪率を見てみます。まずは、入力1Vのとき、VRでゲインを変えてみたときの歪率で、測定周波数は1KHzです。
| 出力電圧(Vrms) | 0.05 | 0.1 | 1 | 2 | 5 | 10 | 15 | 16 |
| 歪率(%) | 0.069 | 0.055 | 0.050 | 0.049 | 0.046 | 0.047 | 0.28. | 0.5 |
| 周波数(Hz) | 20 | 50 | 100 | 500 | 1K | 5K | 10K | 20K | 50K | 100K |
| 出力電圧1V歪率(%) | 0.051 | 0.051 | 0.050 | 0.042 | 0.050 | 0.051 | 0.053 | 0.067 | 0.1 | 0.18 |
| 出力電圧5V歪率(%) | 0.076 | 0.096 | 0.050 | 0.046 | 0.047 | 0.058 | 0.083 | 0.13 | 0.30 | 0.46 |
| 出力電圧10V歪率(%) | 0.20 | 0.27 | 0.327 | 0.050 | 0.044 | 0.11 | 0.21 | 0.37 | 0.38 | 0.76 |
出力電圧10Vで20,50,100Hzの歪率が悪くなっていますが、これは実験に使った定電圧電源の最大出力電流が2Aでリミッタがかかるためだと思います。低域ではピーク電流が検出され、電流が供給されないので、波形が歪んでしまったのではないかと思います。
次に出力抵抗とダンピングファクターを測定してみます。測定方法はON−OFF法です。
| 周波数(Hz) | 20 | 50 | 100 | 500 | 1K | 5K | 10K | 20K | 50K | 100K |
| 出力抵抗(オーム) | 0.075 | 0.075 | 0.075 | 0.058 | 0.050 | 0.025 | 0.017 | 0.034 | 0.13 | 0.36 |
| ダンピングファクター | 106.7 | 106.7 | 106.7 | 137.9 | 160 | 320 | 470 | 235 | 61 | 22.2 |
ケース仮組み:ケースと放熱器が出来上がってきましたので、間違いが無いか仮組みしてみました。
前面 |
後面 |
上面 |
最終回路と結線図を掲載します。
回路図PDF
結線図PDF
次に組み立て済みの基板の写真を示します。
御覧のようにキットの放熱器を購入された方は、放熱器にトランジスタを取り付けるタップが切ってありますので、3mmのビスでトランジスタを放熱器に取り付けてください。
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| 設計電圧(V) | マイナス電源電圧(V) | プラス電源電圧(V) | |
| 出力段 | ±24V | -24.6 | 24.6 |
| ドライバ段整流出力 | ±40V | -40.4 | 40.3 |
| ドライバ段定電圧出力 | ±31.8V | -32.8 | 32.2 |
| OPアンプ用整流出力 | ±20V | -21.3 | 21.2 |
| VR最小ノイズ電圧(AカーブμV) | VR最大ノイズ電圧(AカーブμV) | S/N(db) | |
| 電圧入力 | 35.6 | 109 | -103.5 |
| SATRI−LINK | 36 | 105 | -103.8 |
| 出力電圧(V)/周波数(Hz) | 20 | 50 | 100 | 500 | 1K | 5K | 10K | 20K | 50K |
| 1 | 1.019 | 1.023 | 1.025 | 1.024 | 1.024 | 1.023 | 1.014 | 1.014 | 0.936 |
| 2 | 1.996 | 2.005 | 2.007 | 2.005 | 2.006 | 2.003 | 1.998 | 1.984 | 1.824 |
| 5 | 4.99 | 5.02 | 5.03 | 5.02 | 5.03 | 5.01 | 4.99 | 4.93 | 4.45 |
| 10 | 9.91 | 10.03 | 10.04 | 10.04 | 10.04 | 9.97 | 9.89 | 9.64 | 8.34 |
| 15 | 14.70 | 15.00 | 15.05 | 15.05 | 15.05 | 14.91 | 14.64 | 14.19 | 11.48 |
| 出力電圧(V) | 0.05 | 0.1 | 0.2 | 0.5 | 1 | 2 | 5 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
| 歪率(%) | 0.165 | 0.084 | 0.057 | 0.048 | 0.046 | 0.046 | 0.044 | 0.046 | 0.049 | 0.056 | 0.068 | 0.12 | 0.29 | 0.69 |
| 出力電圧(V)/周波数(Hz) | 20 | 50 | 100 | 1K | 10K | 20K | 50K |
| 1 | 0.043 | 0.043 | 0.043 | 0.043 | 0.046 | 0.054 | 0.050 |
| 2 | 0.043 | 0.042 | 0.042 | 0.042 | 0.049 | 0.065 | 0.067 |
| 5 | 0.041 | 0.040 | 0.040 | 0.041 | 0.080 | 0.137 | 0.149 |
| 10 | 0.039 | 0.037 | 0.036 | 0.043 | 0.234 | 0.401 | 0.338 |
| 15 | 0.054 | 0.054 | 0.062 | 0.3 | 1.43 | 0.59 | 0.60 |
電源ON/OFF |
電源投入ノイズ |
ドリフト |
10Hz電流入力 |
10Hz出力段 |
|||
100Hz電流入力 |
100Hz出力段 |
1KHz電流入力 |
1KHz出力段 |
10KHz電流入力 |
10KHz出力段 |
100KHz電流入力 |
100KHz出力段 |
ケースの加工中 |
放熱器の取り付け |
裏パネルの加工 |
正面パネル |
電源の組み込み |
基板の取り付け |
配線作業1 |
配線作業2 |
配線作業完了 |
電源のチェック |
調整作業 |
システム構成 |
完成 |