先月、SATRI回路V9.0の開発が終了し、SATRI倶楽部MLの希望者にディスクリートのカレントミラー回路が乗っているアンプのバージョンアップをしました。この内容と結果は下記のボタンを押してご覧下さい。

                     SATRI回路V9.0について

 SATRI回路V9.0はカレントミラー回路の改良でした。その改良の度合いはシミュレーションでは誤差が−170dbから−176dbになるというごくわずかな差でしかなかったので、大きな期待もせずにAMP−5540MKVを改造してみたのですが、普通のテレビ画像からハイビジョン画像になったような情報量の増加を感じることが出来ました。
 バージョンアップを申し込まれたMLのメンバーの試聴記でも、今までのバージョンアップの中で最も変化が大きかったと感想を書かれる方もいて、数字では表せない大きな改善効果があることを確認しました。
 しかし、今回のバージョンアップはディスクリートのカレントミラー回路を採用している機種に限られ、それを使用していないコンパクトアンプシリーズはバージョンアップすることが出来ませんでした。
 そこで、考えられることはSATRI−IC自体のV9.0化です。SATRI−ICはカレントミラー回路の組み合わせですから、それをV9.0にすることは可能です。しかも、信号が通るカレントミラー回路は3箇所ありますので、V9.0化は3箇所となり、ディスクリートのカレントミラー回路、1箇所のバージョンアップよりも改善効果は大きいと考えられます。
 しかし、新しいICを作ることは簡単ではありません。まず、互換性を保つためには同じ大きさ、同じピン配置にする必要がありますが、V9.0を乗せる為には12個のトランジスタを増設する必要があります。しかし、あの狭い基板の裏はすでにトランジスタでいっぱいでした。そこで、今までは実装してなかった表にもトランジスタを実装し、基板を2層から4層化することにより、同じ面積の中に12個のトランジスタを増設することが出来ました。
 それで基板設計を完成させて基板メーカーに見積を依頼したのですが、トランジスタが手に入らないという回答が来ました。私が指定したトランジスタは、アナログ回路用なので、メーカーのカタログに在っても製造はしていないというのです。現在はトランジスタメーカーは携帯電話、パソコン、ゲーム機など売れ筋以外の部品はほとんど作っていないそうで、それ以外に使う部品は受注数が規定の数量に達しないと作らないそうです。ですから、必要としているアナログ用のチップトランジスタが出来るのは、いつになるか分からないということです。
 それから、別のメーカーのトランジスタ選定、納期の確認、設計のやり直しを2度繰り返し、やっと、新しいSATRI−ICの見積が出てきました。
 これからが一番大変なことをクリヤーしなければなりません。SATRI−ICを作るにはチップ部品を使います。チップ部品はリール単位が基本で1リールに入っている部品の数は3000個から8000個です。また、基板サイズが小さいので、1シートあたりの最小個数が多くなってしまいます。ですから、ある程度の数を作らないと販売できる価格にはならないのです。SATRI−ICの場合は最小発注個数は1000個です。それに基板の原版代、部品代、金型代などのイニシャルコストがかかります。それを全て弊社でまかなうのは現状では不可能です。
 そこで、販売店さんとMLのメンバーに相談してみました「新しいSATRI−ICを作りたいが予約注文していただけないか」と。弊社からのお願いに賛同していただいて、イニシャルコスト分の予約注文をいただき、無事に発注することが出来たのです。

従来のSATRI−ICとの比較 

まず、従来のSATRI−ICと新しいSATRI−IC−SP V1.0との比較を下の表に示します。電気特性はシミュレーションの結果です。

従来のSATRI−ICとの比較 現行SATRI−IC 新SATRI−IC
SATRI−ICの名称 SATRI−IC V4.3 SATRI−IC−SP V1.0
SATRI−ICの型番 BPM−7110HS BPM−7120SP
基板の層数 2層 4層
銅箔の厚さ 35μ 1・4層110μ、2・3層35μ
レジストの色 グリーン ブラック
シルクの色 ホワイト イエロー
樹脂モールド 1液エポキシ 無し
シミュレーションの結果
周波数特性(0db)RL=10KΩ 10KHz 100KHz
位相(25度)RL=10KΩ 60KHz 90KHz
歪率(10V) 0.0028% 0.0013%
出力インピーダンス 803.1KΩ 2.157MΩ
入力インピーダンス 3.72Ω 3.68Ω
ノーマルモード・レジェクションレシオ −47db −70db
コモンモード・レジェクションレシオ −51.8db −53db

これを見ますと、SATRI−IC−SP V1.0は基板自体は4層になり、しかも、銅箔の厚さも厚くなっています。これは、限られた面積に多くのトランジスタを集積しなければならなかったことと、シミュレーションの結果に出ている通り従来のSATRI−ICよりも帯域が10倍広がっているので、安定な動作をさせるために、より、インピーダンスを低くする設計をしました。
 また、一目で分かるように、レジストとシルクの色をグリーンとホワイトから、ブラックとイエローに変更しました。それから、今まで樹脂で裏側をモールドしていたのですが、それが原因で樹脂と基板の膨張率の差によるトランジスタの剥がれがありましたので、それを防ぐ意味で樹脂でモールドを止めました。
 シミュレーションの結果を見てみます。SATRI−IC−SP V1.0は従来品よりも帯域は10倍に伸びています。帯域が伸びた分、実装には気を使う必要があります。弊社の製品でしたら、両面ベタアースを取ってあり、基板のインピーダンスを極力低くするように設計してあるので、問題ないと思いますが、自作される方は従来品の方が使いやすいかもしれません。
 歪率は、約半分になっています。V9.0のバージョンアップのときに歪率が半分になることは実測していますので、実機でも歪の低減は期待できます。出力インピーダンスは2倍以上、他の特性も従来品に比べると向上していますので、総合的に見て大きな精度の向上を期待できます。



SATRI−IC−SP V1.0の開発スケジュール:
 SATRI−IC−SP V1.0の設計は完了し、現在、基板メーカーさんでアートワークのチェックが完了し、試作品の製造に入っています。
 4月の第2週の終わり頃に試作品が出来上がる予定で、第3週には弊社に試作品が到着する予定です。
 試作品が到着したら、測定を行いパターンの間違いや動作の確認をします。動作確認が終わり、特性の測定、試聴が終われば量産開始です。
 この時点で、弊社での測定結果、試聴結果を発表できると思います。
 間違いがなければ、4月の末までにはSATRI−IC−SP V1.0が納品されます。
 間違いなどで手直しがあれば、1週間から2週間ほど納品は遅れると思います。
 予定通りに進めば、20日までに予約をされた方で、お支払いが済んだ方より納品され次第発送します。それ以外の販売は連休明けの7日から予定しています。
SATRI−IC−SP V1.0の詳細