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バクーンプロダクツの新世代パワーアンプのフラッグシップともいえるSHP-5516Mが届いた。モノ構成なので置き場が確保しきれないので取り敢えずは縦置きのイレギュラー設置。
渋い調子のマイカブラック(写真では青みがかっているが実際は漆黒)のパネルフェイスは重厚感も漂い、茶のつまみも映えており、モノとしての完成度が伝わってくる。
プリ連動で電源が入ると、動作インジケーターを兼ねたパイロットランプが緑の点滅をはじめ、5分弱で青の連続点灯したところで回路が安定したことになる。いささか待ち遠しいが、オーケストラでいえば演奏前のチューニング音が指揮者の入場を待ちわびさせるような効果に通じる。
最初のテストには松任谷由実のアルバム、『SURF & SNOW』の中にある「恋人と来ないで」。松任谷正隆とのデュオで歌われるもので、SHP-5516プロトで聞いた際、男女声質の描き分け方に「ここまで違うかと…」溜め息をつき、驚いたものだ。
あの耳にこびりついた、くったくのない音ののび、刻々の艶、調子の寂寥感…を期待するも、奔放な力感と磐石の土台感を感じさせるものの、シアター用アルテックのようなレンジの狭さ、押し込まれたような佇まい。
明らかに、エージング不足。このブルックナー開始のような霧がどんな晴れ渡りに変わっていくのか…
★以下、17日朝にバクーンプロダクツのMLにアップした感想文。
「奔放な力感と磐石の土台感を感じさせるものの、シアター用アルテックのようなレンジの狭さ、押し込まれたような佇まい。」
こんな風に書きましたが、この「奔放な力感」のキーワードは、従来の5514_V11.1との比較で構造線のように浮かび上がる言葉。
通電しっぱなしでの使用ですが、昨日は帰宅後ここは1つと、マーラーの交響曲を聴いてみることにしました。
最近富みに注目されてきているヘルビッヒ、フィルハーモニア台湾による第9番。
音数が多いのに混濁の様子は微塵もなく、ボヤッとしていた印象の山が、1段、2段下位のレイヤーから組み立てられていたことに気付かされます。樹種のレベルで見分けられる木々はそれぞれの微気候に揺れ、草むらの色合い、付けている実のディティールまでも、特に注意しなくとも眼前のものとして立ち現れています。
高分解のレンズがやらかす合成の誤謬は無く、実体感、温度感などマッスな実像がそこには繰り広げられ、音楽の進行方向に生き物のようにのめり込んでいく、奔馬のような風情も。
特にコントラバスや大太鼓、金管の下降音など法悦もので、そこに、トライアングルのトレモロが被さる対比は息を飲む快感がもたらされます。オケ全体が大きな息を継ぐ、これも生き物のように現れる静寂…それら万物は5516の掌中に。
新たに導入したパワーアンプSHP-5516Mも1週が経ち、初期エージングも済んだ印象で、いよいよ本来の力が見えつつある。
これまでまるで聞こえなかった帯域の情報がある。吉村弘の遺作「Four Post Cards」に収められた最終の2曲は神奈川県立近代美術館(鎌倉と葉山の2館)の開場、閉館時に流されているサウンドスケープに葉山海岸で収録した波の音とが重ねあわされたエディションとなっているのだが、マイクが風に吹かれて発する低域ノイズが混入しているのを看取したこと、これまでなかったこと。
SHP-5516M2台がやってきて1ヶ月が経った。10月にしては蒸し暑いと感ずる日もあるが季節は灯火親しむの候。
SHP-5516プロトとの違いをバクーンプロダクツのメーリングリストで質されたりしたが、一寸聴きには躍動感、軽快感などの要素でSHP-5516プロトの方が良い印象があったかも…と書いた。
が、SHP-5516M2台の世界は明らかにSHP-5516プロトとは異なる世界を連れて来てくれている。
それは、霧ヶ峰で初めてキャンプした時の夜空の怖さ…漆黒と無限の階調で沈んでいく星屑の実在を感じた怖さに連なる感覚の閾値域の拡大体験ともいえるものだろう。
→バクーンプロダクツのメーリングリストへの投稿抜萃
当地のSHP-5516のその後、いろいろなソースに隠れていた楽器や、裏の旋律の発見相次いでます。従来の大型アンプにない静寂や間の味わいは、日本人ならではの感性、感受性に基づくものと思われます。
新自由主義的な効率と利潤のみ追求する風潮、昨今は司法制度にもまで及んでいること感じさせますが、永井明さんの求道的開発の到達点、極く早い時期に世界に還流していく愉快を祈念します。
プロトタイプを試聴させていただいて、SHP-5516の持つポテンシャルに圧倒され購入に至りました。もしプロトタイプの試聴をしていなかったらSHPの音を聴くのは数年先、もしくは聴くことがなかったかもしれません。そういう意味ではこの巡り合わせは幸運だったと思います。エージング進行中なので音質については追ってレポートしますが、聞き慣れたCDが別音源かと思うくらい今まで気づかなかった音が見つかります。5513のブラウンパネルに名残惜しさを感じていましたが、5516のブラックパネルは深みがあり吸い込まれそうな黒で新世代機のイメージとマッチしていると思います。
あと、聴き始めに左右の音量バランスがおかしかったのですが、よく見ると片方のGAINつまみのカット部が目盛りのドットとドットの中間あたりを指しており、左右でGAINが1段ずれていました。このあたりの組み付けも高級感に寄与すると思いますので、一応報告させていただきます。
プリアンプがないのにモノパワーを導入してしまったので、音量調整がちょっとたいへんです。5513をプリ化してみようかなどと贅沢なことを考えています。
2週間程度経過したので現時点のレポートです。
だいぶエージングも進み緊張感がほぐれて、伸びやかさが出てきた感じです。特に低域方向は300mm程度の大口径ウーファーで聴いているような、肌で感じる圧力のような押し出し感がありながらも軽快なんです。プロトタイプでも低音域の音程感の良さが特徴でしたが、モノ化された5516製品版ではさらにエネルギー密度の濃さが加わります。電源が倍増されているから当然といえば当然ですが単に馬力があるとか押し出しの強さではなく、フラットなエネルギー感を保ちながら低域方向にどこまでも伸びていく感じです。ジャズ系では少しドロドロした低音の方が雰囲気は出ると思いますが、5516の濃いのに軽いベースとかピアノのアタックは鮮度が高く気持ちいいです。演出されたジャズのイメージではなく、ライブハウスで生演奏を聴いている感覚に近いです。もちろん見通しの良さもプロト以上で、青空の見晴らしの良さというよりイメージ的には澄みきった夜空の星を眺める感覚でしょうか。